『20世紀SF<4>1970年代接続された女』

中村融山岸真のアンソロシリーズ第四弾
いや、なんで突然4なんだよっていうと、これが一番面白そうだったというか、タイトルや作者に聞き覚えのあるのが多かったから

ジェイムズ・ティプトリーJr.「接続された女

広告がなくなったかわりに、スターに品を使わせることで商品の宣伝をしている未来。
自殺しかけた醜い少女は、美少女の肉体を遠隔操作する装置に繋がれ、広告塔に仕立て上げられる。
彼女の実際の肉体はずっと地下室に閉じ込められているわけだが、起きている時間の大半は美少女の肉体に接続しているので、その生活は彼女にとっても満足いくものとなっている。
しかし、ある男と恋に落ち、その男が彼女が広告塔として利用されていることに気付いたために悲劇が起きる。
桜庭一樹の「A」ってまんま「接続された女」だったんだなー
ところで、「オタク」って二人称で使われているのをすごく久しぶりに見た

ジーン・ウルフ「デス博士の島その他の物語」

こんな感じの話だったのかーこれ
ある少年が冒険小説を読んでいると、その冒険小説の登場人物が少年のいる現実世界にも出てくるというもの
ってこれだけ書くとなんだかって感じの話なってしまうが、いい雰囲気の話だった

ジョアンナ・ラス「変革のとき」

女性しかいない世界に、何世紀ぶりだかに男性が戻ってくるというもの。

アーシュラ・K・ル・グィン「アカシア種子文書の著者をめぐる考察ほか、『動物言語学会誌』からの抜粋」

アリ語とかペンギン文学とかに関する論文
これは作者本人が「主観論の行きすぎを描いた」とコメントしているらしいが、そういうパロディというかギャグというかそういうネタなのだけど
最後に出てくる
言語はコミュニケーション手段であるが、芸術はコミュニケーション手段ではない、という仮説はちょと面白い
もちろんこれは、植物にも芸術があるというトンデモ主張を導くためのトンデモ仮説として書かれているネタなのだけど

ジョン・ヴァーリィ「逆行の夏」

水星に住んでいる「ぼく」のもとに、月からクローンの「姉」が訪れる。
母は何故、「姉」を置いて、「ぼく」と共に水星へ移住したのか。
一人につき子どもは一人という時代。核家族というものがもうなくなっている時代(一人の親が一人の子どもを育てる)。
性転換も自由に行われる(生涯に何度も?)。
実は「ぼく」の母は、母ではなく父だった。姉の養母とかつて結婚していたのであり、離婚したために、子どものクローンとともに水星へ移住していた、ということを姉から聞くことになる。
水銀の池や頻発する地震など、水星の情景描写がなかなかいい。
肺に取り付けた機械で、宇宙服のようなものを生成しており、事故や災害があったときにも対応できるようになっている。
ところで、『スティーヴ・フィーヴァー』に対して、どんなに人類が変わっても旦那は妻の尻に敷かれているということを誰かが指摘していたが、確かに男女の夫婦が当たり前のように維持されていくとは限らない、というか、そこらへんの方が変化しそう。

マイクル・ビショップ「情けを分かつ者たちの館」

鉱山の事故で身体のパーツを機械に入れ替えた結果、機械として生きていきたいと思うようになった男
治療のために「情けを分かつ者たちの館」に入れられる

クリストファー・プリースト「限りなき夏」

未来人だか異星人だか分からないが、凍結装置を使って、人の時間を止める者たち。
彼らに時間を止められると、普通の人間からは見えなくなるが、絵のようになってそこにとどまり、彼ら(凍結者)の鑑賞の対象になる。
そしてある程度の時がたつと、再び解凍される
主人公は、1903年に婚約を申し込んだ瞬間に凍結され、数十年後に解凍された。しかし、彼女の方はまだ解凍されず、以来彼女のそばでずっと生活している。
そして1940年、爆撃があって

バリントン・J・ベイリー「洞察鏡奇譚」

これはなんか面白かった。
周囲を岩に囲まれた空洞に暮らす人類。ある若者が他の空洞を探すために冒険に出る。
というのを、別の異星人が観察している。で、我々は空間のなかに物質がほんの少しと思っているが、もしかしたら彼らが考えているようにこの宇宙の空間と物質の比率は逆なのかも、という仮説をたてる。
というのを、また別の異星人が観察していて……

R.A.ラファティ「空」

ラファティよくわかんないw

フリッツ・ライバー「あの飛行船をつかまえろ」

歴史改変もの
これもよかった。
第二次大戦が起きてなくて、ドイツが技術大国になっていて、飛行船が飛行機の地位となっている30年代後半のアメリカ。
という世界を何故か体験してしまった男の話。
飛行船いいよねー
このライバーは、50年書き続けた、ファンタジーシリーズとかあるらしい。

ジョージ・R・R・マーティン「七たび戒めん、人を殺めるなかれと」

ある惑星に、バッカロンという宗教を抱く<鋼の天使たち>というのが植民していて、原住民の宗教的シンボルであるピラミッドを破壊したり、抵抗運動があると虐殺したりしている。
で、商人の男がそれを苦々しく思いながら見ていて、孤児となった原住民を集めてレジスタンスを作り始める。
ベトナムをもとにしているのかなーみたいな話。


20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女 (河出文庫)

20世紀SF〈4〉1970年代―接続された女 (河出文庫)