山岸真編『スティーヴ・フィーヴァー』

SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー第3弾・ポストヒューマンSF傑作選
何故か第3弾から手に取った。
まあイーガンが入ってたからなんだけど

ジェフリー・A・ランディス「死がふたりをわかつまで」

この形式の勝利

ロバート・チャールズ・ウィルスン「技術の結晶」

義眼から始まって、少しずつ身体を人工物に置き換えていく話。
レナルズの「ダイヤモンドの犬」をちょっと想起したり
わりと好き

マイクル・G・コーニィ「グリーンのクリーム」

人類が3交代制で、働いたり、小さなロボットを遠隔操作して観光旅行したりしている未来(人口爆発への対応策として)
かつて新婚旅行で訪れたというイギリスの農村を再び訪れた老夫婦の愛の形。
この未来における、観光業やら遠隔操作ロボットやらの話も面白いけれど、最後に明かされる老夫婦のロボットを介することでしか一緒に入れないというオチが切ない

イアン・マクトナルド「キャサリン・ホイール(タルシスの聖女)」

火星テラフォーミングの話
クリュセって地名が出てくる。
純精神存在になろうとして、ついに火星の機械の神になる女の話
火星でくらす老人と孫の話

チャールズ・ストロス「ローグ・ファーム」

ストロスは、『シンギュラリティ・スカイ』がピンとこなくて敬遠していたけれど、これはまあ普通に面白かったかも
ファームと呼ばれる集合体と化して木星へと旅立とうとする人々と、地球で人間の肉体のまま生きていこうとする人達の確執。
後者は後者で、記憶を空っぽの肉体にダウンロードする技術を使うことはいとわない。

メアリ・スーン・リー「引き潮」

収録作の中で一番暗い話だったかもしれないけれど、一番好きな話かもしれない
経済的にもだいぶ暗くなっている感じのイギリスが舞台。
世界的に、進行性の精神障害が流行している。アメリカでは、その病気にかかった人はロボット化して労働者に変えてしまう法律が施行され、娘をその病気に冒された主人公はイギリスへと舞い戻ってくる。
母と娘の最後の日々。

ロバート・J・ソウヤー「脱ぎ捨てられた男」

意識をロボットへとアップロードすることが普通になった未来。
アップロードし終わったあとの肉体は一体どうなるのか。残された肉体は死ぬまで贅沢な暮らしができるが、その代わり自由はない。
意識を再び自分へと戻すように主張する肉体は、自分の意識が入っているロボットと面会することを求めて立てこもり事件を起こす。

キャスリン・アン・グーナン「ひまわり」

あるテロによって撒布されたナノマシンによって、超越的なヴィジョンを見るようになり死んでしまった妻と娘。
主人公の男は、ふたりが見たものがなんだったのか知るために、そのナノマシンを探すべくアムステルダムへ向かう。

グレッグ・イーガン「スティーヴ・フィーヴァー」

やっぱりイーガンは面白い。
あるとき、少年はどうしてもアトランタへ行かなければならないというフィーバーにかられる。
あるナノマシン群が、人間をコンピュータの代わりに使役していて、そのために人間をアトランタへ呼び寄せているという話。
このナノマシン群は、自らを作ったスティーブという男を復活させるために、人間を使ってスティーブのシミュレーションを何度も何度もやっているらしい。

デイヴィッド・マルセク「ウェディング・アルバム」

これも面白かった
一番長かった
アルバム代わりに、人生のある瞬間の状態を記録できる技術。シミュラクラム。その時々の意識状態のシミュレーションを作ることができる。
ハイスクールの卒業式とか大学のパーティの時とか結婚式の時とかで、何体も<シム>を作ってディスクに保存して、時々それを再生して走らせる。
基本的に、結婚式の時に作られた<シム>側から見た話。
本人が錯乱しちゃって、他の<シム>を次々と削除しちゃったり、時代を経て<シム>にも人権が与えられるようになったり

デイヴィッド・ブリン有意水準の石」

シミュレーション(過去の偉人やフィクションの登場人物の)の人権が叫ばれ始めた時代。
そうしたシミュレーションの作家である主人公は、その運動に対抗する計画を練るために、自分のシミュレーションをいくつも走らせることにする
そして、それらを競争させモチベーションを高めるために、シミュレーションに自分がシミュレーションだということを知らせ、一番いいアイデアを生み出した者には現実世界で生きられるようにしてやると約束をする。
と、実は自分もシミュレーションの存在だったと分かる話。
脳の中に複数のエージェントが走っていて、意志決定をするときにそうした複数のエージェント同士で決めているという設定

ブライアン・W・オールディス「見せかけの生命」

宇宙の博物館で過去の遺物を探す男。
かつて戦争があった惑星で発見された、メッセージを保存したホログラフ。


スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

スティーヴ・フィーヴァー ポストヒューマンSF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)