カンディンスキーと青騎士展

三菱一号美術館にて。
初めて行ったのだが、丸の内の近代的なビルの中に煉瓦造りのモダンな造りの建物で、中庭にカフェとかがあって、「おしゃれ」な空間だった。
内装も当時を再現していて、暖炉の上に絵を展示していたりする。
初めてといえば、今回初めて音声ガイドを借りてみたのだが、これはあんまりよくないなあと思った。既によく言われていることだが、番号いちいち押すのがたるいし。ナレーションの内容も、壁に解説として貼っておけばよくない、って感じだった(ある絵は壁に解説がはってあり、音声ガイドがなく、ある絵は音声ガイドがあって、解説が貼ってない。その違いがいまいちよく分からなかった)。
カンディンスキーに影響を与えたシェーンベルグの曲が流れる、というので借りたのだけど、それがついているのも一部だけだし。曲だけを聴けるトラックも用意されていることは用意されているのだけれど。
やはり、本格的にARが美術館の中に入ってくるのを期待したい。


あと、美術展の解説ってどうしても物語になりがちだよなあと思う。
今回の場合、ガブリエーレ・ミュンターという人が寄贈したコレクションによるものなのだけど、このミュンターという人が、カンディンスキーのパートナーだった人で、ただ二人が出会ったときにカンディンスキーは既に結婚しており、妻がいるミュンヘンにはいられなくて、二人であちこち旅行しながら絵を描いていたらしい。なので、解説もそういう二人の話が中心になる。まあそういうエピソードはある程度必要だけれど、別にいいよとも思ってしまう

序章

カンディンスキーに影響を与えたシュトゥックらの絵
《闘うアマゾン》の額が、手描きで装飾が施されていてかっこよかったのだけど、そしてその装飾はおそらく絵の内容とある程度関係していたのではないかと思ったのだけど、あの額はもともとの額なんだろうか。よくわからなかった

第1章

カンディンスキーが、ファーランクスというグループを作っていた頃。
印象派とか象徴主義とか、そういった先行する表現の影響を受けていたのかなあと思った。色の塗り方とか?
ただ、色彩はもしかしたら独特、というか何というか、自分はあんまり絵を見ていないので何とも言えないけれど、ロシアっぽいのかもしれない。黄色とかオレンジとか青とかそういった鮮やかな色がわりとぼやーっとある感じ。シャガールがこんな色を使うような気がするんだけど。
《日曜日(古きロシア)》のためのスケッチ、は後景にクレムリンと思しき建物があり、色鮮やかに人々が描かれて、なんだかメルヘンチックな絵。
メモ:カンディンスキーは元学者、友人の画家であるヤウレンスキーは元軍人

第2章

ミュンヘンから離れてムルナウという郊外に居た頃。
カンディンスキー《オリエント風》
大分抽象化が進んでいるというか、形が簡略化されていて、人間もどこにどういう風にいるのかが判然としない感じ。後ろにはロシア風の建物が建っている、のだが、これも言われないと分からない。
ヤウレンスキー《ムルナウの風景》
これはかっこよかった。道が右奥の方に延びているのだが、それに併せて幾何的な線が何本か引かれて三角形の構図を作ると共に、シンプルな描線の木が中央に配置されている。太い輪郭線(クロワゾニスムというらしい)と色のコントラストが印象的。
それから、ミュンターがヤウレンスキーのパートナーであるヴェレフキンの肖像画を描いているのだが、ヴェレフキン自身の自画像もあり、この二つがとても印象が違って面白い。ミュンターの肖像画はまあ普通なんだけれど、自画像の方は眼が赤く光っていて、B級SF映画の悪役宇宙人っぽいw
あと汽車描いた絵とかあった。

第3章

ここから、完全に抽象画の世界へと入っていく。
シェーンベルグの曲を聴いて着想を得たという《印象3》
シェーンベルグピアノ曲もこれが結構かっこいい。無調になってきているからなのか、なんかちょっとジャズっぽい感じもする。
青騎士展が開かれて、マルク、マッケ、クレーが参加している。クレーというと、例の天使の絵しか知らなかったので、今回展示されていた《サボテン》はなんか全然印象が違った。油絵だし。
マルクという人は、動物をテーマに描き続けた人らしいのだけど、《虎》がかっこよかった。幾何学的な線で描かれていて、まるで何か鉱物の結晶のように虎が描かれている。キュビスムっぽいといえばキュビスムっぽいかもしれないけれど、なんか違うのは色彩のせいだろうか*1。しかし、どこか戦隊ヒーローあたりのロボットを想起させるのが、かっこいいと思った理由かもしれないw
カンディンスキーは抽象画を、《印象》→《即興》→《コンポジション》という順で制作していったらしい。この順番で、奥行き感みたいなのがなくなって、平面に色と線がぐあーっと配置されているようになっている感じがした。
マレーヴィチモンドリアンが、幾何学的な図形や線だけで、ある意味理性的に配置された抽象画を描くのに対して、カンディンスキーは、同じように幾何学的な線に向かっているはずなのに、柔らかくてぼやーっとしていてぐあーっとした絵になっているのは何故なんだろう*2。あと、色。ロシア・アヴァンギャルド展を見たときに、マレーヴィチとかロシア・アヴァンギャルドの人たちも、色の塗り方はあんまりくっきりはっきりしているのではなく、ぼやーっとした感じで描いてたりもしているけれど、カンディンスキー青騎士の方が、もっと色が印象的。最初の方で、フォーヴィズムの影響も受けていたみたいだけど。
ま、個人的にはマレーヴィチが好きなんだけどね。

*1:キュビスムはあんまり色が豊かな感じがしない

*2:擬態語だらけの頭悪い文で申し訳ないw