『パコと魔法の絵本』

パコかわいいよパコ。
嫌われ松子の一生』の監督が、さらに過剰な演出とVFXとCGと特殊メイクを駆使しまくった作品。
ごちゃごちゃした色彩とモノで溢れたセット*1で組まれた、飛び出す絵本で表されるような、おとぎ話の中のような、アミューズメント・パークのような世界。
役所広司妻夫木聡土屋アンナなどといった俳優陣が、顔が分からなくなるほどの特殊メイクをされて、デフォルメの効いた姿で現れる(広告だけ見ていると、誰が誰を演じているのかよく分からないのだが、動き喋っているところを見ると誰かやっているのかはっきりと分かる)。
ある意味で、フィクションやエンターテイメントの論理を究極にまで突き詰めていったような世界が現れている。その点、物語や台詞、登場人物の背景に関していうと、やや類型的というか教訓話めいたところがあって、ちょっとなあと思ってしまう*2
しかし、役所演じる大貫が、パコのためにと企画したお芝居がいざ始まると*3、もうすごい。
実写の俳優とCGキャラクタが、何度となく入れ替わりながら、「ガマ王子対ザリガニ魔神」の物語が展開されていく。パコがフィクションの世界の中へと入っていく様が、VFXとCGと音楽によって余すところなく描かれていく。それでいて、劇中劇であるところもしっかり見せてくれる。
それにしても、とにかくCGで描かれたガマ王子がぴょんぴょんぴょんぴょんと跳ね回るところは、実に楽しい映像になっている。こいつらが大暴れする映像の楽しさが、間違いなくこの作品の魅力である。
また、阿部サダヲが演じる堀米が、なかなか憎い狂言回しとなっている*4
何だか人生が上手くいかなくなってしまった者の、切なさや可笑しさを描くという点で、『嫌われ松子』ともよく似ているなあと思った。
あと、何故かエヴァとかケロロ軍曹とかが映ります。
それにしたって、パコかわいいよパコ。

パコと魔法の絵本 [DVD]

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*1:しかも歪んでいる

*2:とはいえ、それのおかげで結構笑ったり泣いたりはしてしまうw

*3:この劇中劇が作品のクライマックスで始まるのはかなり後半

*4:絵本「ガマ王子対ザリガニ魔神」をお芝居にするのだが、堀米にだけ役がない。そこで堀米は勝手にヤゴ役として出るのである。しかし後になって分かるのだが、実は堀米はその絵本の作者本人だったのである。大貫とパコの物語自体も、老いた堀米が大貫の甥の息子に語っているという形式を取っている。そんなわけで堀米は、カメラ目線を向けたりもするのだ。そのうえこいつは、デウス・エクス・マーキナでもある