「巨匠ピカソ愛と創造の軌跡展」

今とっている授業で、指定された展覧会のどれかを見てレポートを書いてくることという課題が出されていて、それで行った。
本当は「アヴァンギャルド・チャイナ展」を見に行きたかったのだが、行きそびれてしまった。
本当はアヴァンギャルド・チャイナを見に行きたかったのに、レポートも書かなきゃいけないし仕方なくピカソ展に行く、という状況だったので、期待値が低かったのだが、見てみたら、やっぱピカソはやべーな、さすが天才だなと思うに至った。また、ピカソはわけわかんねーよという思いにも至った。
彼のスタイルの変遷に関してである。
初期から晩年に至るまでの作品が時系列順に並べられているので、彼のスタイルがどのように変化していったのかがよく分かるようになっている*1
1900年代から10年代というのは、ある意味では分かりやすい。アヴィニョンの娘たちの制作から始まり、キュビズムを一気に展開していく時期である。10年足らずでかなりラディカルなところにまで行き着く。記号化・抽象化の過程であり、コラージュや立体作品などといった技術的な展開も見られる。
これが10年代後半から20年代に、古典主義の時代に入るのだが、正直、これが曲者だと思った。ギリシア彫刻のような絵を描き始めるのだが、かといって写実的というわけではなく、アンバランスなデフォルメがされている。10年代までは、記号化・抽象化の過程であるが、一方で色彩は非常におとなしく、構成もとてもバランスのとれているものだったのとは、対照的である。古典的・写実的な要素を取り入れつつも、それとは別の方向へと向かおうとしている。
そして30年代、おそらくシュールレアリスムからの影響を受けて、一気にぐねぐねとしたイメージを展開しはじめていく。
正直、情報量の膨大さに、後半は結構頭が疲れていて、あんまりじっくり見ていなかった。いわゆるピカソっぽい作品が多くなる時期だけれども。
立体作品や出版物も比較的多く展示されていたところが、結構面白かった。ピカソの立体も結構面白い。
もう少し、解説が欲しいとも思った。解説文は、彼の女性遍歴が中心となっていたので。
30年代後半から40年代にかけても、何ごともないかのようにがんがん作品をパリで作っているのだけど、戦時下、ナチス占領下なわけで、そこらへんどうだったんだろうと気になった。ピカソといえば、ゲルニカがあまりにも有名だけれど、そういう政治的な作品は少なかったよう。


僕は、シュールレアリスムの絵は結構好きなのだけど、明らかにシュールレアリスムの影響を受けたであろう30年代以降のピカソの絵はなんだか好きになれなかった。むしろ、ピカソはなんか苦手だという印象すら受けた。展覧会に行って、そういう印象を受けることは今までなかったので、自分としては珍しい感覚である。
でも、1900年代から10年代にかけての、つまりキュビスムはいいなと思う。ある意味で、わかりやすいからかもしれない。ラディカルではあるのだけれど、方向性としては、抽象化・記号化なんだなあということが分かる。形を単純化したり、量感をなくしたり、さらには記号として新聞を貼ったり、と。


色々なスタイルをどんどん作っては変わっていって、あるいは自分より若いグループからの影響を受けたりしながらも、それを受けてさらに自分のスタイルを変えて、死ぬまで描き続けるという点で、手塚治虫っぽいのかなあとも思った。


展覧会のタイトルが「愛と創造の軌跡」なんだけど、フランス語だとSa vie et sa creation*2なんだよなあ。


20世紀の歴史くらい、もう少し年号で覚えておいた方がいいなと思った。
asahi.com : 朝日新聞社 - 「巨匠ピカソ」展

*1:ただし、「青の時代」と「バラ色の時代」はほとんど点数がなかった

*2:eにアクサン