ワールドカップ最終戦、ヴァルマレンコ大会

3月12日にハーフパイプ、15日にモーグル、16日にスキークロスがそれぞれ行われた。
これで今季のワールドカップは終了。
振り返ってみると今季は、日本勢が大いに伸張したシーズンだったといえる。
来年は、いよいよ猪苗代で世界選手権が開催される。
思えば今シーズンが始まる頃、猪苗代の世界選手権大会が、滅茶苦茶な予算計画のために開催が危ぶまれていることが報じられた。詳細を追っていないので、現在どのような状況なのかはちょっとよく分からない。
しかし、是非とも日本人選手の活躍を日本で開かれる世界選手権大会で見てみたい。
そして、フリースタイルスキーへの注目が高まり、フリースタイルスキーやウィンタースポーツをめぐる状況が少しでもよくなればいい。

ハーフパイプ

男女ともに出場人数が少ない*1
どうも最終戦というのは、総合ランキングの上位者だけが出場できるらしいので、まあそういうことなんだと思うが*2
女子では、モンジョワ、猪苗代で1位だったサラ・バークが2位に
逆に、モンジョワ、猪苗代で2位だったジェニファー・フダック(HUDAK)が1位。
男子では、カナダが1位、4位、9位、フランスが3位、6位、7位。
女子も、サラ・バーク含めカナダが2人ランクイン、とカナダが強さを見せている。
大会があるたびに書いている気がするが、平均年齢が非常に若いのも特徴
男子リザルト
女子リザルト

モーグル

男子

1位デビッド・バビック
2位ヴィンセント・マーキ(MARQUIS
3位パトリック・デネン
4位タピオ・ルーサ
5位デイル・ベッグスミス
6位西伸幸
7位SPETT Per
8位BJOERNLUND Jesper
9位ジルボー・コラ
10位ドミトリー・レイハード
P-A・ルソーが12位、アレクサンダー・ビロドーが14位、ネイザン・ロバーツが16位、上野修が17位、ウォレン・ターナーが21位となっている*3
女子では後半、上村愛子が優勝し続けて、それをスドヴァとマーブラーが追うという構図ができていったが、男子では最終戦まで群雄割拠の時代が続き、ついに王者は出てこなかったような感がある。
ちょっとデータがないので分からないが、おそらく総合優勝はデイル・ベッグスミスであろう。
その点では、トリノ以来のデイル時代が続いているということはできる。しかし、トリノの年の常勝っぷりを、デイルは今季見せてはいないし、ヤンネ王朝には遙かに及ばないという感じがする。むしろ、ジルボー・コラがコンスタントに成績を残したようにも思える。
また国別で見ても、ヤンネ、サミ、ミッコの去ったフィンランドは急激に勢いを失い*4、しかしかといってアメリカ勢が一気に伸張するかといえば、確かに出場選手数や上位進出者の数は多いかもしれないが、必ずしもそういう雰囲気でもない。
国別で考えるならば、P-A、ビロドー、マーキ、ターナーを擁するカナダが最大勢力となっているといえるだろう。次の五輪は2010年、バンクーバーであるのだからこれはもっともな話である*5。しかし、かといって表彰台にいつもいたかといえば、必ずしもそうではなかったはずだ。
逆に、ロシアが若い選手を輩出してきたことや、カザフスタンが優勝するような選手を出してきたことの方が、印象が強い。
かつてモーグルというと、アメリカ、カナダ、フランス、フィンランド、ロシア、日本に限られていた雰囲気すらあった*6。しかし、デイルはオーストラリアであるし、今大会、7位のSPETT、8位のジェスパー*7スウェーデンである。それに上述したカザフスタンなどを加えると、モーグルがかなり広まってきたといえるかもしれない。
そんな中、日本勢はどうだろうか。
確実に選手数が増えてきているし、また予選突破することが決して困難なことではなくなってきた。今季は、表彰台にも何回か送り込んでいる。
特に際立って強い選手が現れていない現在、来季(世界選手権)や来々季(五輪)に、上位へと食い込んでいく可能性は十二分にあるといえるのではないだろうか。
リザルト

女子

1位上村愛子
2位マルガリータ・マーブラー
3位ニコラ・スドヴァ
4位MCPHIE Heather
5位伊藤みき
エミコ・トリトが8位、ミシェル・ロークが9位、エカテリーナ・ストリャロバが11位、クリスティ・リチャーズが22位*8
終戦の表彰台は、今季の女子の構図が見事に反映された形となった。
上村は、シーズン後半、5連勝という怒濤の快進撃によって見事総合優勝を果たした。5連勝というのは圧巻である。特に、総合優勝が確定した後も、優勝することができたということは大きい。これはもはや、上村の強さがかなり確固としたものになっている証しといえるだろう。
しかし、来季、来々季も上村が新女王の地位に立ち続けることは、必ずしも容易なことではない。
ジェニファー・ハイルの存在である。今季、彼女は欠場したが、昨シーズンまで圧倒的な強さを誇った選手であり、自国開催となる次の五輪までトップを維持し続ける気は当然あるだろう。
来季、ハイルが復活してくれば、上村との頂上決戦はいやがうえにも盛り上がっていくはずだ。
だが来期以降、上村の前に立ちはだかってくるのは、ハイルだけではないだろう。
今季、上村を追い続けたスドヴァ、マーブラーの両選手は当然として、伊藤みきもまたライバルとなってくるのではないだろうか。
彼女の成長は著しく、もしかすると、今季もっともファイナル進出回数が多い日本人選手は彼女かもしれない。


上村の帰国記者会見について、ブログ「FreeSnow」がまとめてある
そこでは、新コーチであるヤンネへの信頼感が語られており、またヤンネとの契約もバンクーバー五輪まで延期されたともある。
今季、上村愛子、そして日本モーグル勢の伸張に、ヤンネが大きく貢献していることは間違いない。
僕はフィンランドびいきであり、フィンランドの有力選手が相次いで引退してしまったことに一抹の寂しさを覚えているのだが、今季の日本には、ヤンネ譲りのフィンランド的な攻撃的な滑りを見ることができる。もとより、アメリカがエアを見せてくるのに対し、フィンランドや日本はターンの完成度を高めることを重視していたところがある。
日本人選手が、フィンランドばりのアグレッシブなターンをこれからガンガン見せてくれるのであれば、それはそれでとても嬉しいことだ。
リザルト

スキークロス

男子

1位ラース・レーベン
2位STEFFEN Andreas
3位MATT Andreas
4位PICCARD Ted
土井俊幸が自己最高タイの7位、瀧澤宏臣が9位、河野健児が12位*9
日本勢について、ここ数年、まず選手数が増えてきたということはプラス面である。
しかし、成績面でいえば、今季は必ずしもよかったわけではない。
瀧澤、河野、土井の各選手はそれぞれ、自らのブログで今季の反省と来季への意欲を語っている。
スキークロスは今後、競技としても盛り上がっていくだろうし、その中で日本人選手がさらに活躍していく部分は大きい。
来季、来々季とどうなっていくか、楽しみである。

シーズン総合成績も9位で終えました。
はっきり言って厳しい結果です。


瀧澤宏臣のブログ「WC最終戦終了しました。」

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/hiroomi-takizawa/article/131

今季はこれまでにないくらいのたくさんレースに出場しました。
しかし結果はこれまでで一番悪かったと思います。

ただ、シーズン中におこった様々なアクシデントを乗り越え、WCに全戦出場しリザルトは残してきたことについて、素直によくやれたと思います。
(中略)
グリンデルワルドではWC参戦してから、初めて予選落ちを経験しました。
膝の状態が悪化した原因もあったとはいえ、WCポイントも無得点に終わり、総合成績も一気に落ちました。

トップ選手達はどんなコンディションに置かれたとしても、常に安定した結果を上位の数字で残してきます。
今季僕はトップレベルからは一つ下のランクで、なんとか維持してきた感じでした。
(中略)
しかし結果の良し悪しは別にして、今季は終了しました。
来季に向かって始動しなければいけません。


瀧澤宏臣のブログ「帰国しました」

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/hiroomi-takizawa/article/132

結果は、自己最高タイの7位となりました。
総合ランキングは21位。
最後にこの2ヶ月突破出来なかった1回戦を勝ち抜き、セミファイナルまで行けた事を嬉しく思います。
と、同時にファイナルまで行けなかった事がとても悔しいです。
(中略)
ここからが本当の勝負だと思っています。
長く、とても険しい道のりだけど、必ず頂上まで登ってみせます。
末永く見守ってください。


土井俊幸のブログ「ワールドカップおしまい。」

http://ameblo.jp/irielife0518/entry-10080541606.html

そして今シーズンのワールドカップランキングは22位。納得のいく結果でシーズンを終わる事はできませんでした。
今シーズンは出だしこそ良かったものの1回戦突破という壁に跳ね返され続けたシーズンでした。
(中略)
今日はチームメイトの土井選手が7位、瀧澤選手が9位、福島選手が4位と日本チームも層が厚くなってきたし来年の世界選手権そして2010年のオリンピックに向けて良い方向に進んでるのではないでしょうか。


河野健児のブログ「World Cup Final」

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/kenji-kono/article/51


また、瀧澤は自らのブログで、スキークロスにおけるチームプレイの重要さを語っている。

またWCではすさまじい情報戦が展開されています。
その日のスケジュールに始まり、公式トレーニング開始後は滑走ラインのテストと確認、スキーの滑走性はどうか、抜くポイントは、ゲートはどこが有利か・・・
現在スキークロスに精通する専門コーチがいない日本は全てが後手後手となってしまっています。
プレー中は選手一人ひとりが勝負していますが、単に役割り分担がはっきりしているだけのことで、プレーヤーとサポートスタッフを含めた完全なチームスポーツです。
(中略)
今季そのトップを走ったのはカナダでした。
昨季までの彼らを知っていれば、非常に驚く成長振りです。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/hiroomi-takizawa/article/131

ここでもカナダである。
フリースタイルスキーの世界で、カナダは明らかに今トップを走っている国と言えそう。
2010年、カナダで開催されるバンクーバー五輪に向けて、その体勢を着々と整えているのだろう。
リザルト

女子

1位オフィリー・ダビッド
2位BERNTSEN Hedda
3位メリル・ブーランジェ
4位福島のり子
5位サーシャ・ファリッチ*10
男子では、王者クラウシュの地位が揺るがされているの対して、女王ダビッドの地位は今季も盤石のようだ。
それをメリル・ブーランジェらが追うという構図だが、その中に福島もまたいる。
福島は、今季何度目だ、という4位。
ファイナルの4名に残ることはできるようになってはいるが、表彰台にはまだ手が届かない。
彼女は、スキークロスの日本人選手の中では、今季もっとも成績がよいし、上村、伊藤とあわせて、今季のフリースタイルスキー日本チームを先導し続けた。
しかしそれでも、本人にとっては悔しいシーズンだろう。
来季、来々季、世界選手権と五輪というビッグな大会が続く。そこで、今季の悔しさを跳ね返し、是非とも優勝をとってもらいたい。
まだまだ知名度が高いとは決していえないスキークロスを、より広めていくためにも、福島の活躍に期待である。
以下は、福島のり子のブログより

今季X−gameを含め4位は3回目( ̄ロ ̄lll)
残念ながら、今の私にはファイナルに進んでもコンスタントに表彰台をGETする力はありません・・・。
悔しいけどこれが現実。
マダマダ課題がいっぱいです(=゚ω゚)ノ
これは幸せな事ですね♪♪♪

そして、今季の総合は5位でした☆
去年に比べるとかなりステップアップしたなぁ↑↑↑
TOPまであと4人だーー!!
昨日のレースは課題も見つかったけど、大きな収穫もあった(●´з´)しっかり来季に繋げよう♪

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/bt_fukushima/article/45

リザルト

*1:男子9人、女子5人

*2:モーグルスキークロスも、普段の大会より出場人数が少ない

*3:出場人数は21人

*4:フィンランドびいきである僕としては、今大会のタピオ4位入賞は、だから喜ばしいニュースだ。とはいえ、タピオはまだコンスタントに予選突破することがなかなかできない

*5:ハーフパイプスキークロスでもカナダ勢が強い

*6:もちろん、以前からこれら以外の国からも選手は来ていたし、逆に、いまでもこれらの国の選手数が圧倒的に多いが

*7:このブログではあまり紹介していないが、この2人もコンスタントに好成績を残している

*8:出場選手数は22人

*9:出場選手数は31名。トマシュ・クラウシュとスタンリー・ヘイヤーの名前は何故かない

*10:出場選手数は14名