こうの史代『夕凪の街、桜の国』

話題の本ですしね。
一度、他の4ページ程度の作品を読んだことがあって、独特の絵柄だなあと思っていたけれど、この作品を読むと演出技法への意識も感じられた。
そのわりに、さらさらと読めるし。
滅茶苦茶凝っている、という感じはしなかったのだけど、マンガ書評サイトとか見ると、予想以上に色々しているのだということが分かって、あとで再読してみるつもり。
コマの間に、時間を凝縮している。


内容に関しては、「夕凪の街」でいえば、あちこちで言及されまくっているのだろうけど、「誰かに死んでほしいと思われた」という一節。
戦争は災害ではない、ということ。
戦争の悲惨さだけを訴えると、ともすると、震災の悲惨さと区別がつかなくなりかねない。
そして、「桜の国」に関していえば、不可視化されてしまったヒバクシャの存在。
以前、ある授業で、あるいは『辺境から眺める』を読んでアイヌにつれて触れたときも、やはりアイヌが不可視化されてしまっていることを思い知った。
つまり、差別についての話なんだけど。被差別者の不可視性っていうのが、なんともうーん、考えさせられるというか何というか。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)