吉田修一『パレード』

友達が、書きたかったことをもうやられていた的なことを言っていたような気がするけれど、確かに今、人間関係について何か書こうとしたらこうならざるを得ないのかもしれない。
基本的にはとてもあっさりとしていて、洒落た感じというか、まあ軽い読み物のようにして読んでいたんだけれども
これはそのパッと読んだ感じあっさりしているようでいて、結構ドロッとしているというか、グチャッとしているというか、そんなものを内包している。
つまるところ、人間関係というのはそういうものなのだろうし。
読めば分かるし、読まないと分からない。
だーっと一気に読めてしまうので、一気に読んでしまって「物語」作りの巧さを堪能していると、思いがけずこれが「物語」ではなく「小説」であることに気付かされることになるだろう*1

パレード

パレード

*1:「物語」と「小説」に厳密な定義はないけれど、個人的には区別して扱っている。前者は筋立ての面白さ、後者は何かそれ以外の面白さを持っている。おおむね、石原千秋の『大学受験のための小説講義』で導入された区別に拠っている