コルビジェ展

わりと思いつきで、コルビジェ展に行ってきた。
六本木ヒルズ森美術館
初めての六本木ヒルズに、何というか自分は場違いだなあという感覚ばかり。
52階までの直行エレベータ。
天井の灯りの色が少しずつ変わっていく、という趣向。
上りは、東京観光してるっぽい家族と一緒だったか、下りは一人だった。一人で下りに乗っていると、ちょっと怖い。


コルビジェというと、サヴォワ邸と輝ける都市しか知らないので、あんなに絵を描いている人だとは思わなかった。
ただこちらとしては、コルビジェと聞いて建築家のイメージしかなくて、突然絵を見せられても「なにこれ?」って感じだった。何だか、ピカソキュビズムとミロの色彩感覚を合わせた感じの絵で、いくつか「いいな」と思うのがあったけど、あまり惹かれなかった。
コルビジェは、絵だけでなくて造形も手がけていて、まるで絵をそのまま立体にしたかのようなものは面白かった。基本的には木材で、それに塗装して、あと鉄の棒や錨をちょっとつけている感じ。
絵だけでなく、建築においても、色の感覚が南欧の人っぽい。赤とか黄色とかがベタっベタっと並んでいる感じ。モダンで好き。
家だけでなく、家具や車の設計もしている。
車は、なんだか小さな奴で乗り心地悪そうだったけど、スツールなんかは現在のと遜色ない。1928年とかに作っている。当時は、スチールのフレームを使うのは斬新だったらしい。寝椅子に座ってみたけれど、これがかなり寝心地がよかった。
彼の建築は、幾何学的なユニットをどんどん繋ぎ合わせて形を作っていく、という感じ。
彼の作る集合住宅なんかは、ひどく無機質な感じがする。彼の都市計画のいわば末路を知っている身としては、やはりこんな無機質な家には住みたくないよな、と思う。
だが、模型を見ていると、これが実にかっこいい。
模型の中に、人形が置いてあって色々なことをしているのを見ているのも楽しい。何故か全ての部屋にグランドピアノの置いてある集合住宅の模型があった。
個人の家の場合、集合住宅のように単純にユニットの組み合わせではない部分が面白い。
そういう場合でも、正方形と正方形を並べて黄金比を作って、とかそういう風に作っているらしいのだけど、その割には妙に過剰な部分がある*1
ユニットを基本とした合理的なデザインを目指しつつも、何故だか生じた過剰な部分がコルビジェ建築のオリジナリティなのだろう。
会場では、何カ所でビデオ*2が上映されていたが、その中の一つはBGMとしてサティを流していた。何だかこれが実によくあう。他のどのBGMよりも、サティが一番よかった。いや、個人的にサティが好き、というのもあるけれど。
最初は鉄、ある時期からはコンクリートを多用するようになったらしい。
コンクリートを使う理由は、自由に形を作ることが出来るから。
ユニットを繋ぎ合わせていくタイプの集合住宅は、鉄骨の使用によって可能になったもので、非常に直線的である。
コンクリートを多用している建築では、むしろ非常に曲線的になっている。
その中で面白いのが、教会だ。
コルビジェは教会を3つ造っていて、最後の一つが完成したのはなんと2006年のことらしい*3
これらの教会は、なかなか教会には見えないのだけれど、コンクリートによる曲線、曲面によってデザインされている。そのコンクリートの中に赤や黄色がちらっと見えたりしている。
ソヴィエト・パレスというもののコンペにコルビジェが出展し、結局落選してしまった建築の模型がある。空港のようで非常にかっこよい。
やはり落選しているが、アルジェの都市計画の方はあまりかっこよくは見えなかった。
館内には、コルビジェのアトリエを再現していたり、コルビジェの建てた家や部屋を実物大で再現して入れるようになっているところがある。シンプルながら、収納スペースやトイレが部屋の隅に押し込まれいて、何となくビフォーアフターっぽい。
これ明らかにベッド小さいだろ、とか*4


いくつかwebの解説から抜粋

彼の都市計画は過密化する近代都市に、いかに人間的な環境を構築するかという課題に対する彼なりの一つの回答であった。そして、1935年に出版した『輝ける都市』はル・コルビュジエの都市計画思想の原点となり、「太陽、空気、緑」がキーワードとなった。

理念はよいのだけどね。
今とっている授業で、コルビジェが実際に建設したチャンディガールと彼の弟子たちが建設したブラジリアが、住みにくくて結局全然発展しなかったという映像を見てしまっているので、何とも言えない。

彼は車もデザインしたが、それも彼にとっては、移動する最小限住宅であった。

近代における人間の理想の環境を生み出そうとした。その彼が、最後に到達した最小限の住まいが、この小屋だったということは、象徴的で意味深い。

車は、最小限で最大限の効率をとかいうコンセプトだった。
確かに最小限だけど、むしろ狭くないか、とつっこみたくなる。
ある意味では、茶室の理念と近付いてくるのかも知れないけれど*5

ル・コルビュジエが「音響的形態」と呼んだリズミカルな空間の構成、周囲の環境と響きあう建築的プロムナードを体現した建築と言えるだろう。

でも、サティと何か通じるものがあるとしたら、その最小限のユニットをリズミカルに構成していった結果、何でもないはずの幾何学的デザインがオリジナリティのある集合体としての作品になっている、ということなのではないだろうか*6


森美術館ル・コルビュジエ展

*1:何故か、長い滑り台がついている家があって楽しそうだった

*2:このビデオは面白かった。CGでデザインがどんどん組み上がっていくところが見れる。ちょっとDVDが欲しくなったw

*3:コルビジェは1965年に死んでいる

*4:一番最後にある、《キャバノン(休暇小屋)》

*5:まえ、美の巨人たちでやってた

*6:かなりテキトーな結論