仲俣暁生による桜庭一樹評論『野生時代』39号

少女七竈についての評論。
桜庭一樹の新しい点を二つ。
ここではないどこかの居場所を探すのが近代文学や女性作家だったとして、桜庭はいまここで生きていくことを選ぶ。いまここの生き方をどのようによりよくしていくか。
従来は、都会=若さの象徴だったのに対し、桜庭は都会に老いを割り当てる。都会に引っ越してくることで、急速に老いていく、変化していく主人公。少年少女達は郊外で生きているのではないか。
最後に、『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』から以下の部分を引用する。

あたしは、暴力も喪失も痛みもなにもなかったふりをしてつらっとしてある日大人になるだろう。友達の死を若き日の勲章みたいに居酒屋で飲みながら憐情たっぷりに語るような腐った大人にはなりたくない。胸の中でどうにも整理できない事件をどうにもできないまま大人になる気がする。

「どうにもできないまま」であれ。
松本大洋論でも、同じようなことを言っていた。
これはきっと大事だ。