石田衣良『うつくしい子ども』

酒鬼薔薇事件をモチーフにした小説。
8歳の女の子を惨殺した13歳の少年の兄が主人公。
弟が何故凶行に到ったかを、兄が探っていく。
兄の心情やメディア・スクラムの悲惨さがよく描けている。
また、「夜の王子」の真相に近づいていくにつれて、なかなかぐっとくる。
自分が自分であることを確証するのは困難であるか、もしくは不可能なことなのに、それを何とかして示そうとあがく子どもたち。
その中には、からっぽさに耐えきれず、夜の王子となってしまう者たちもいてしまう。
ただし、この作品はあくまでもエンターテイメント。
ミステリ的な謎解きまで用意されている。
その部分はエンターテイメントだと割り切ってしまえば面白かったが、弟を裏で操る真犯人がいた、というだけでもちょっと興ざめで、さらにいえばその犯人像も、表の顔は超優等生で裏の顔は超悪人というありがちなもので非常に残念だった。
そういう意味では、主人公や彼らの通う学校の設定もやや非現実的な感がある。
重松清の方が、まだ真に迫ってくる感じがする。

うつくしい子ども (文春文庫)

うつくしい子ども (文春文庫)