有川浩『海の底』

怪獣小説!
と、そう名付けよう。
平成ガメラパトレイバー踊る大捜査線を足しあわせたような雰囲気。
俺のツボを結構直撃。
うちのサークルの専門用語を使うならば「ときめき」だ。
要するに、趣味の世界。はまる奴には恐ろしく効くが、はまらない大多数にとっては微妙な感じかもw
「だから遅すぎたと言ってるんだ!!」が好きな方とか、是非ww
ミリタリー用語が、わりと何の注もなしに出てくるので、そういうの苦手な方は若干注意。ヘリを型番で呼ばれてもどれのことかわからん。


今回は、ハードカバーでも別に構わないかな、というか、逆にラノベっぽいイラストでは確かに包みにくい、ということは感じた。
ただ、読みながら、映像で見たい、というのも思った。
実写でもアニメでも構わないけど、何らかの映像にすると、より楽しくなる感じがした。尺の問題とかもあるけど。あるいは、マンガにすることもできなくはない。単行本1〜2冊程度の分量で。
そうすると逆に、なんでラノベのイラストをつけると違和感が出るか、ということは一考の価値があるのかもしれない。
ラノベというのが、オタク的感性によって作られた小説であるのであれば、怪獣オタ、軍オタの感性で書かれている本作がラノベのレーベルから出ても構わないはず。
有川浩を、ちょっとラノベから逸脱すると捉えてしまうのは、ラノベというジャンルが狭くなっていることを示しているのではないか。
もし自分がラノベを書くとしたら、多分こういう作品を書きたいと思うし、こういう作品は堂々とラノベの中にいるべきなんじゃないかなぁ、とか。


ま、面白いから、ラノベかどうか、とか別にどうでもいいんだけどね。
友達にあらすじを説明したら「無駄にかっこいい」と言われた。
そう、「無駄にかっこいい」
働く大人(本作の場合、警察官)のかっこよさを描いている、というか。
今作もやっぱり、飄々としながらもキレ者が登場してくる。今回の場合、飄々というか、食わせ者かw
上のお歴々には苦々しく思われているが、能力はとても優れていたりする奴ね。縄張り争いや責任問題に汲々としている面々の裏をかいて、現場と大局を見据えた事態収拾をしてみせる。後藤小隊長とか、後半の室井管理官みたいなのといえばいいのか。


しかし、今作でもまた、子供たちのパートが結構な分量さいてある。
あとがきで「それにしても何で毎回怪獣にベタな青春だの恋愛だの混ぜんのよ、と思われる向きもあるかと思いますが私にこれ書くなってのは息するなってのと一緒なのですみません」と言われてしまうと、文句が言いにくくなるのだが。
このパートは、かなり水を差される。
重松清にでも書かせとけよ、って感じの内容で、警察パートとのバランスとりたいのかもしれないが、マッチしてない。
警察・怪獣パートはベタゆえのかっこよさがあるから、ベタで構わないんだけど、子供たちパートはただベタなだけ。
全体としては、(怪獣小説として)面白いが故に残念といえば残念。


有川浩『空の中』の感想はこちら


海の底

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