『システムの科学』第3版

邦題はシステムの科学だが、原題は“THE SCIENCE OF THE ARTIFICIAL”
つまり、人工物(人工性)の科学であり、ここでいう「システム」とは人工物を指す
だが、ここでいう「システム」とは、内部環境と外部環境のインターフェイスと定義され、いわゆる人工物といっても、モノではなくむしろ企業や社会といったものを指している。
さて、作者であるハーバード・サイモンは、限定合理性という概念を提唱した人物であり、本書の中でも限定合理性は大きなキーワードとなる
人間の情報処理能力というのは、限定された単純なものでしかないのである
本書の前半では、人間が限定された能力の中でいかに情報を処理し課題を解決していくか、ということが記されていく。
そして、後半では、人間(個人)の外部、企業、社会、世界へと目が向けられていく
もし、人間の作るものが複雑に見えたとしても、それは人間が複雑なのではなく、世界が複雑だからである。
しかし、その世界の複雑さも階層性という点から説明される
例えば生物であれば、細胞内小器官―細胞―器官―器官系―個体というように、階層性を持っている
下位の階層と上位の階層の関係性によって、複雑さというのは説明できる、とされる。
作者は、ノーベル経済学賞を受賞したこともあり、本書も多くの例が経済の分野からひかれているが、こっちが経済のことは全く知らないので、そこらへんはほとんど理解できなかった
しかし、心理学や生物学、物理学など他の学問からも豊富な例が引かれていたので、本書の大枠を理解することはそれほど困難ではなかった、と思う。
(実は、読む前には生物学系の本だと思い込んでいたので、読んでみたら経済学メインで面食らった)

システムの科学

システムの科学

  • 作者: ハーバート・A.サイモン,稲葉元吉,吉原英樹
  • 出版社/メーカー: パーソナルメディア
  • 発売日: 1999/06/12
  • メディア: 単行本
  • 購入: 17人 クリック: 204回
  • この商品を含むブログ (54件) を見る