『DUNE/デューン 砂の惑星』

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による同名SF小説の映画化作品。 ヴィルヌーヴ監督作品というと、『メッセージ』 - logical cypher scape2、[ 『ブレードランナー2049』 - logical cypher scape2]を見たことがあるが、映像化困難とされるSF作品請け負い監督のよう…

『文藝春秋2023年9月号』(市川沙央「ハンチバック」ほか)

実家に帰った際に当該号が置いてあったので読んだ。 むろん「ハンチバック」目当てで読んだのだが(実家にあったのも同じ理由)、それ以外についてもちらっと読んだ。 感想をメモっておいたが、結果的に「ハンチバック」本編へのコメントが一番少なくなって…

『日経サイエンス2023年10月号』

『Newton2023年10月号』 - logical cypher scape2とともにこちらもLLM特集で、両方読むことで理解が深まった日経サイエンス2023年10月号 [雑誌]日経サイエンスAmazon オウム以上フクロウ未満? 生成AIの“思考力” G. マッサー 確率論的オウムとも言われるが…

『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

『ジュラシック・ワールド』三部作の完結編という位置づけの本作 事前に評判は多少聞いていたので、まあ確かに物語としてはあまりよくなかったが、個別のシーンではよいシーンが結構あって、結構楽しめた。 やっぱり『ジュラシック・ワールド/炎の王国』 - …

『Newton2023年10月号』

Newton 2023年10月号作者:科学雑誌Newton株式会社ニュートンプレスAmazon Chat GPTの教科書 監修・松尾豊 Transformerは、単語同士の意味の近さをベクトルの内積で表現する うーん、概念としては分かるけど、わからん まあそれはそれとして、Transformerは、…

倉田タカシ『あなたは月面に倒れている』

筆者の初のSF短編集。2010年代各所で発表された作品8編*1と書き下ろし1編を収録している。 あとがきで作者自身が述べているが、前半と後半とで作品の雰囲気というか作風がずいぶんと違っている。前半の5編は設定やプロットがちゃんとあるが、後半4編は、奇…

リシャルト・カプシチンスキ『黒檀』(工藤幸雄・阿部優子・武井摩利・訳)

アフリカについてのルポルタージュ。ポーランドのジャーナリストである筆者が、1958年からおよそ40年に渡って取材してきたアフリカ各国でのルポ29篇からなっている。 「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」におさめられた1冊である。文学というとつい小説を…

滝口悠生「恐竜」(『文藝2023年秋号』)

この作品を読もうと思ったのはタイトルが恐竜だったから、では決してなくて、以下の矢野さんのツイートによる。 滝口悠生さんの「恐竜」(『文藝』2023・秋)、めちゃ良いですね。ここ最近の滝口作品のなかでもとても好き。保育園するからだだと思いました、…

『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』

ギリシャで書かれた短編SFアンソロジー もはや完全に翻訳SFの一角をなした竹書房文庫から。 タイトルには傑作選とあるが、元の本として『α2525』という、未来のアテネを想像するという企画による短編アンソロジーがある。これにさらに英語圏で発表されていた…

『犬王』

室町時代の猿楽師である犬王と琵琶法師の友魚(ともな)がバディを組んでロックをやる映画。 某動画サービスで見た。 2021年8月3日に、以下のようなツイートをしていた。 これ(『犬王』のこと)全然知らんかった 原作古川日出男、監督湯浅政明、脚本野木亜…

「ABSTRACTION抽象絵画の覚醒と展開」展

アーティゾン美術館の3フロア全てを使った大規模展覧会 なお、以前アーティゾンに行った際には、1フロアにつき1つの展覧会をやっていた。一応全部見たので、3フロア全て回ってはいるのだが、とはいえ、目当て以外の展覧会は飛ばし気味に見ていた(Transform…

パトリク・オウジェドニーク『エウロペアナ 二〇世紀史概説』(阿部賢一・篠原琢訳)

20世紀の歴史をカットアップした実験小説 海外文学読む期間をやっているが、海外文学といえば白水社だろと思って、白水社のサイトを見て回ってたときがあってその時に見かけて気になった本の1つ。 現代チェコ文学を牽引する作家が、巧みなシャッフルとコラ…

『ユリイカ 2023年7月臨時増刊号 総特集=大江健三郎』

実物を見ると600ページ超の分厚さにびびる。 大江健三郎について最近ちょっと読んでいるとはいえ、全然明るくないので、ごくごく一部の論考だけちらっと読んだユリイカ 2023年7月臨時増刊号 総特集◎大江健三郎 ―1935-2023―作者:工藤庸子,尾崎真理子,市川沙央…

スティーヴ・エリクソン『君を夢みて』(越川芳明・訳)

エチオピアの少女を養子としたアメリカ人作家ザンの「アメリカ」を巡る物語。 オバマが大統領選挙に勝った頃のロサンジェルスやロンドン、あるいはザンが書く小説の中のベルリン、ロバート・ケネディが大統領選に向けて活動中のワシントンなどを舞台にして物…

『文藝 2022年夏季号』

久しぶりに図書館で文芸誌の棚を見ていたら(というか『文藝』の別の号を探していたのだけど)、表紙にある「フォークナー」「イーガン」「犬王」の文字が目に入ってきたので、思わず手に取ってしまった。文藝 2022年夏季号河出書房新社Amazon ◎特集2 フォー…

スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』(柴田元幸・訳)

分岐した20世紀のあいだで交錯するポルノ作家の男とダンサーの女の物語 片や1942年にナチスドイツがイギリスに勝利することになる世界で、ヒトラー専属のポルノ作家となる男と、片や1945年にナチスドイツが敗北する世界で、ダンサーとなる亡命ロシア人の女が…

結城充考『アブソルート・コールド』

サイバーパンク・ハードボイルド 見幸市を牛耳るハイテク企業・佐久間種苗で発生した大規模細菌テロを皮切りに、元狙撃兵の捜査官、準市民の少女、元警官の探偵が、佐久間の秘められた計画をめぐる事件に巻き込まれていく。 同じ作家の作品として、以前結城…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス8』

毎年恒例、アノニマスの新刊 冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス3』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニ…

『Newton2023年8月号』『日経サイエンス2023年8月号』

Newton2023年8月号 Newton 2023年8月号作者:科学雑誌NewtonニュートンプレスAmazon 建築の未来 五十嵐太郎監修 「木材」「コンピュテーショナルデザイン」「3Dプリンタ」 近年の木材建築トレンドは日本ではなく欧州から始まったが、これは欧州の方が耐震基準…

大江健三郎『万延元年のフットボール』

1967年、大江健三郎が32才の時に書かれた長編小説。前作から3年のブランクを経て、大江にとって30代初の長編作品であり、代表作品でもある。 1960年代の愛媛の谷間の村を舞台に、内向する主人公と活動的な弟との対比を描く。 障害者の子が生まれ、友人を自殺…

エルサ・パンチローリ『哺乳類前史』(的場知之・訳)

単弓類の進化についてのポピュラー・サイエンス本。 タイトルの通り、哺乳類が哺乳類になる前の話で、古生代から中生代の話となっている。 哺乳類というと、中生代は恐竜に隠れた日陰者で、新生代から一気に世界を支配した、というイメージをもたれるが、実…

マーティン・J・S・ラドウィック『太古の光景』(菅谷暁・訳)

サブタイトルは先史世界の初期絵画表現。原著タイトルは”Scenes from Deep Ttime: Early Pictorial Representation of the Prehistoric World” 19世紀のパレオアートについての科学史 「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造」展 - logical cypher scape2の副…

横山祐典『地球46億年気候大変動―炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来』

引き続き地球科学の本。過去の気候変動を復元する古気候学について。 『地球・惑星・生命』 - logical cypher scape2で読んで面白かった章と同じ筆者による関連書籍。 是永淳『絵でわかるプレートテクトニクス』 - logical cypher scape2と連続して読むと、…

恐竜博2023

上野の科博にて科博でやってる恐竜博は、大体3年に1回くらいで、今回で行くの3度目だったようだ 「恐竜博2016」&「生き物に学びくらしに活かす」 - logical cypher scape2 恐竜博2019 - logical cypher scape2 系統図 一番最初に恐竜全体の系統図があった。…

「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造」展

上野の森美術館にて行われたパレオアート展。 19世紀に描かれた黎明期の古生物復元画から、ナイトやブリアンの作品群、日本の恐竜関連古書やグッズのコレクターである田村博によるコレクション、さらに現役のアーティストらによる作品群などが展示され、恐竜…

是永淳『絵でわかるプレートテクトニクス』

プレートテクトニクスについての入門書 『地球・惑星・生命』 - logical cypher scape2のプレートテクトニクスの章*1が面白く、もう少し詳しく読みたいと思ったため手に取った。 そもそもプレートテクトニクス理論自体が1960年代に確立していった、比較的新…

『地球・惑星・生命』

日本地球惑星科学連合の30周年*1を記念して出版された一般向け論文集 日本地球惑星科学連合は、地球惑星科学に関連している学会等の連合組織 「宇宙惑星科学」「地球生命科学」「固体地球科学」「大気水圏科学」「地球人間圏科学」の5つのセクションからな…

『物語の外の虚構へ』への反応

2021年12月に出した『物語の外の虚構へ』ですが、最近、これに対する反応をいくつかいただいているので、ちょっと紹介させてもらおうと思います。 sakstyle.hatenadiary.jp その前にまず、本書についてのおさらいとして、リリース時の記事を挙げておきます。…

オクテイヴィア・E・バトラー『血を分けた子ども』(藤井光・訳)

ヒューゴー賞、ローカス賞、ネビュラ賞の三冠を受賞した表題作を含むSF短編集 作者のバトラーは、1947年生まれで2006年に亡くなっており、本書も原著は1995年に刊行されている。長編が一つ邦訳されているが、日本ではほとんど紹介されてこなかった作家だとい…

マリオ・バルガス=リョサ『楽園への道』(田村さと子・訳)

19世紀フランスで女性解放活動家として労働組合結成を呼びかけたフローラ・トリスタンと、その孫でポスト印象派の画家であるポール・ゴーギャンの半生をそれぞれ描いた歴史小説。 リョサはマリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』(旦敬介訳) - logical cyp…