小説

最近読んだ文学

以前、文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2という記事を書いたが、 2ヶ月ほど経ち、日本戦後文学について、自分の中で一段落ついてきたので、これに該当する奴をリンクしておく。 なお、上記の記事を書いたよりも前のものも含む。 日本文学(…

澁澤龍彦『高丘親王航海記』

澁澤龍彦の遺作にして代表作(唯一の長編らしい)。 高丘親王が天竺を目指す道中を描く作品だが、怪奇・幻想的な風景が、エキゾチックかつユーモラスな文体で綴られている。 元々、特に読もうと思っていたわけではなかったのだが、図書館で島尾敏雄作品を借…

島尾敏雄「離脱」色川武大「路上」古井由吉「白暗淵」(『群像2016年10月号』再読)

島尾敏雄「離脱」 『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2で以前読んだことがあるのだが、この記事を見直してみると 島尾敏雄「離脱」(1960年4月号) 夫婦の話 ずっと勝手してた夫が妻からいろいろ と非常にそっけな…

島尾敏雄『その夏の今は・夢の中での日常』

筆者の、特攻隊経験をもとにして書かれた系列の作品と、夢系列の作品とを収録した短編集 島尾敏雄については[『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2」を読んだら「蜃気楼」が面白かったので、続いて島尾敏雄『夢屑』 - logical cyph…

ウィリアム・ギブスン、ブルース・スターリング『ディファレンス・エンジン』(黒丸尚・訳)

言わずと知れたスチームパンクSFの古典 遙か昔に一度読んだことがあったのだが、全然内容を把握することができず、いつか読み直そうと思いながら幾星霜……。 ギブスン+スターリング『ディファレンス・エンジン』 - logical cypher scape2 最近、巽孝之『恐竜…

島尾敏雄『夢屑』

1970~1980年代、筆者が50代後半から60代前半の頃に書かれた短編集。 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2で読んだ「摩天楼」が面白かったので、手に取ることにした。 解説によると、島尾作品には、『死の棘』など妻との関係を書…

『戦後短篇小説再発見18 夢と幻想の世界』

夢や幻想をテーマに、1949年の日影丈吉「かむなぎうた」から、1996年室井光広「どしょまくれ」まで11篇を集めたアンソロジー。 このシリーズは、まず全10巻で刊行されたが、編集委員の中ではこれでは分量が足りないと考えており、第1期10巻が全て重版できた…

伴名練「二〇〇〇一周目のジャンヌ」

『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー』所収の短編 このアンソロジー自体、読みたいなと思っているのだが、他に読みたい本が結構たまっていて、色々比較しているうちに優先順位を少し下げてしまった一方、本作だけ、web上で期間限定で読めるうちに読んでいた…

『kaze no tanbun 移動図書館の子供たち 』

西崎憲の編集によるムック本シリーズ「kaze no tanbun」 「特別ではない一日」「移動図書館の子供たち」「夕暮れの草の冠」の全3巻なのだが、収録されている作家のメンツを見比べて、3巻中2巻目という中途半端さながら「移動図書館の子供たち」を手に取って…

『SFマガジン2022年2月号』

先日、ハヤカワSFコンテストと創元SF短編賞 - logical cypher scape2という記事で「坂永雄一や酉島伝法など、年刊SF傑作選などを通じてわりと読んでいてもう少し読みたいなあと思っている作家もいる。」と書いたのだが、そういえば、最近のSFマガジンに坂永…

『戦後短篇小説再発見10 表現の冒険』

「家族」や「都市」などテーマ別で編まれた同アンソロジーだが、10巻は実験的な表現方法で書かれた作品を集めたものとなる。 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape…

庄野潤三『プールサイド小景・静物』

第三の新人の一人である庄野潤三により、1950年から1960年にかけて書かれた、デビュー作や芥川賞受賞作を含めた初期の作品7篇を集めた作品集。 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2で読んだ「蟹」が面白かったのと、『群像2016…

『戦後短篇小説再発見 6  変貌する都市』

織田作之助「神経」(1946)から村上春樹「レキシントンの幽霊」(1996)まで、都市をテーマに12篇を収録したアンソロジー 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2に引き続き、読んでみた。 同シリーズは全18巻だが、さすがに全部読む…

藤野可織『来世の記憶』

藤野可織の最新短編集。長さ的には、掌編・ショートショート的なものも結構入っている。 初出媒体は文芸誌を中心としつつ、結構色々な媒体が混ざっている。 初出で最も古いのは2009年の「れいぞうこ」だが、それを除くと、2014年~2019年の作品+書き下ろし1…

ハヤカワSFコンテストと創元SF短編賞

春暮康一『オーラリメイカー』 - logical cypher scape2が第7回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作だったのだが、「あれ、そういえば自分、今までハヤカワSFコンテスト受賞作ってそんなに読んでいないのでは?」「創元SF短編賞の方が読んでいる気がするなー」…

春暮康一『オーラリメイカー』

惑星系を改造するような宇宙生物が登場し、知性の役割を問い直す宇宙SF 第7回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作で、その後出た春暮康一『法治の獣』 - logical cypher scape2と世界観を共有している。 短編「虹色の蛇」も収録 『法治の獣』が面白かったので…

小島信夫『アメリカン・スクール』

「第三の新人」の1人である作家の初期作品を集めた短編集 最近色々文学作品を読んでやるぞ、と思ってる奴の一環である。 小島信夫を手に取ったのは、磯崎憲一郎が好きな作家の一人として名前を挙げていたからなのと、twitterで小島の「馬」について触れてい…

藤野可織『いやしい鳥』

デビュー作「いやしい鳥」を含む3篇を収録した作品集 鳥、恐竜、胡蝶蘭がそれぞれ登場し、少し奇妙な世界を展開する。 藤野作品は以前から雑誌やアンソロジーで少しずつ読んでいたが、最近ふと、もう少しちゃんと読もうかと思い立ち、藤野可織『おはなしして…

文学読もうかという気持ち

最近なんだか文学読もうという気持ちが強くなって、実際色々読み始めているところだけど、これまで何を読んできたかなというのと、これから何を読みたいかなというのを整理してみようかなという記事 それで、このブログを始めてから今までの読んだ小説を数え…

『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』

今年に入ってから急に日本文学を読むブームが自分の中にきているが、それで色々調べていたら見つけたのが、この『戦後短篇小説再発見』シリーズ。 講談社文芸文庫・編(井口時男、川村湊、清水良典、富岡幸一郎が編集委員)で、2001年から2004年にかけて全18…

安岡章太郎『質屋の女房』

安岡章太郎については、以前『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2を読んだ時に面白く感じたので、気になっていた(安岡だけでなく、この『群像』を読んで第三の新人に属する作家が全体的に気になりはじめた)。 去年の12…

リリー・ブルックス=ダルトン『世界の終わりの天文台』(佐田千織訳)

突如人類が滅亡し、最後の生き残りとなってしまった老天文学者と、木星から地球へと帰還するクルーたちが、それぞれに孤独を受け入れ愛に気付くまでの物語。 日本語訳は2018年に刊行されており、その際、冬木さんや牧さんの書評を読んで存在は知っていたのだ…

古井由吉『木犀の日 古井由吉自薦短編集』

1960年代の作品から始まり、主には1980年代(おおよそ古井の40代頃)に書かれた作品を収録した短編集 古井由吉については、最近古井由吉『杳子・妻隠』 - logical cypher scape2を読んだ。つまらなかったわけではないが、格別面白かったわけでもなく、古井作…

磯崎憲一郎『鳥獣戯画/我が人生最悪の時』

長編「鳥獣戯画」、短編「我が人生最悪の時」、乗代雄介による解説、年譜を収録した文庫 (なお、磯崎のサキの字は、本当は立サキ) 磯崎作品は何故かよく分からないが好きでよく読んでいるが、長編を読むのは7年ぶりだった。まあそんなことは気にせずに読ん…

小川哲『地図と拳』

満洲の架空の町のおよそ半世紀の期間を群像劇として描いた長編小説 中国東北部の田舎町に過ぎなかった李家鎮が、仙桃城という都市へと成長し、満洲国の終焉とあわせて消え去っていく。 一つの街が生まれ消え去っていくまでの物語で、建築や都市計画を巡る物…

サラ・ピンスカー『いずれすべては海の中に』(市田泉・訳)

滅法面白く装丁もかっこいい短編集 各SF雑誌で掲載された短編を収録しており、筆者初の単行本である(ただし、邦訳された本としては2冊目。長編『新しい時代への歌』が先に邦訳された)。 まず、内容ではなく装丁の話からする。ジャケ買いに近い感じだったの…

春暮康一『法治の獣』

地球外生命SFの中編3篇を収録した作品集。 3篇中2篇がなんとバッドエンドなのだが、それも含めていずれも面白い作品 地球人類が太陽系外に有人探査できるようになった未来で、3作品とも同一の世界を舞台としている(作者により「系外進出」シリーズと称され…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス7』

3巻以降年に1回のペースで刊行されている同シリーズ。自分も大体毎年6月頃に読んでるっぽい。 冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニ…

ジョナサン・ストラーン編『創られた心 AIロボットSF傑作選』

最近、テーマ別の書き下ろしSFアンソロジーの翻訳が東京創元社から度々出ているが、今回はタイトル通り、「創られた心」をテーマにしたもの。 基本的にはAI・ロボットだが、脳インプラントものやサイボーグものっぽいものもある また、英米の作家以外に、バ…

上田早夕里『獣たちの海』

オーシャン・クロニクルシリーズの書き下ろし短編集 温暖化で海面上昇した未来世界を舞台にしたオーシャン・クロニクルシリーズ 本作は、海上民からの視点で描かれた短編が4作収録されている。獣たちの海 (ハヤカワ文庫JA)作者:上田 早夕里早川書房Amazon 迷…