2025-01-01から1年間の記事一覧

グレッグ・イーガン『祈りの海』(一部・再読)

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(一部・再読) - logical cypher scape2に続き、イーガンの短編をいくつか再読祈りの海作者:グレッグ イーガン早川書房Amazon キューティ 4歳で亡くなる、人工的な愛玩用赤ちゃん(人間の姿をしているが知能は著しく制…

『日経サイエンス 2025年10月号』『Newton 2025年10月号』

『日経サイエンス 2025年10月号』 夢をコントロール 明晰夢で心を癒す M. カー 特別解説:暗黒彗星 R. G. アンドルーズ ADVANCES 種子サイズを変えた恐竜/恋愛願望 『Newton 2025年10月号』 AI創薬 最新レポート 薬の探索から設計へ─AlphaFoldの衝撃 監修 …

スティーヴン・ミルハウザー『ナイフ投げ師』(柴田元幸・訳)

ミルハウザーの短編集。2008年に白水社から出ていたもの(12年にUブックス)が東京創元社から文庫化されたもの。 これまでもミルハウザーは結構読んだけど、かといって網羅的に読んできたわけでもないので、この本も「そういえば読んでいなかったな、文庫化…

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(一部・再読)

イーガンの最初のころ、読んだやつ、もう内容も忘れてるし、いつか再読したいなあと思っていて、 そのいつかが来た気がしたので、読んだ。 全部じゃなくて、なんとなくピックアップしたものだけ読み返してみた。 どこがどう、とは言えないけど、まあやっぱも…

ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(鴻巣友季子・訳)

とある家族とそこの客人たちが夏の別荘で過ごす1日を、意識の流れという手法によって描いた、ウルフの5作目の長編小説。 舞台となっている別荘は、ウルフ自身が子ども時代に夏に訪れていた別荘が、本作の主人公の1人でもあるラムジー夫人は、ウルフの母親が…

アレステア・レナルズ『銀河北極』(一部・再読)

以前読んだ時のは以下。 アレステア・レナルズ『銀河北極』 - logical cypher scape2 銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)作者:アレステア・レナルズ早川書房Amazon 「銀河北極」 主人公は、貨物船の船長で、船の修理に立ち寄っ…

井上弘貴『アメリカの新右翼』

2010年代以降のアメリカの右派・保守主義(本書では「第三のニューライト」と総称される)についての概論 浜由樹子『ネオ・ユーラシア主義』 - logical cypher scape2に引き続き、時事的な政治思想の本 なお、全部で6章からなるが、2章では2010年代の左派の…

『Newton 2025年9月号』『日経サイエンス 2025年9月号』

Newton 2025年9月号 物理の祭典「量子フェス」 言語の進化論 数千種類ある言語の「系統樹」をえがく 日経サイエンス 2025年9月号 北海道で発見 太古の地下生態系 下野谷涼子 協力:鈴木庸平 地下で生き延びる 微生物同士の共生関係 下野谷涼子 協力:延 優 …

浜由樹子『ネオ・ユーラシア主義』

現代ロシアを読み解く際のキーワードとなりつつある「ネオ・ユーラシア主義」について、何人かの論客を通して解説する新書 ただし、本書を読んでわかるのは、ネオ・ユーラシア主義という確固たる思想があるわけではないし、また、プーチンがネオ・ユーラシア…

キム・チョヨプ『派遣者たち』

異星からの菌類「氾濫体」によって地上は人類が住める場所ではなくなり、人類は地下都市での生活を余儀なくされている。主人公のテリンは、地上への探索任務を担う「派遣者」になるための試験を受けるが、自分の頭の中に生じた謎の声に悩まされる、というSF…

アレステア・レナルズ「スパイリーと漂流塊の女王」「スリープオーバー」「トロイカ」

レナルズ作品について、邦訳された奴、大体全部よんだのではないか、と思って調べてみたら、まだ読んでない奴がポロポロあったので読んでみた。 スパイリーと漂流塊の女王 『不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選』収録 フォーマルハウト星系で資源を巡り2つの勢力…

『Pen特別編集 海洋研究の最高峰、JAMSTECに潜入 君はまだ、海を知らない』

『pen』は以前(去年か)、恐竜の号を読んだことあるけど、それはブログに記録とってなかったな。Pen特別編集号 君はまだ、海を知らない 海洋研究の最高峰、JAMSTECに潜入 (ペンプラス)CEメディアハウスAmazon [特別描き下ろし漫画] 「深海へ」五十嵐…

上田早夕里『リリエンタールの末裔』

2011年のSF短編集。え、もう15年近く前なの…… 表題作は読んでいたのだけど、その後、読むの止まってそのまま忘れてしまっていたんだよな。いや、完全に忘れたわけではなくて、ああそういえばと意識はしていたけれど。 4篇収録。最後の一つは書き下ろし やっ…

アレステア・レナルズ『反転領域』(中原尚哉・訳)

フィヨルドを北上する帆船は、「大建造物」を探そうとする探検隊を乗せている。主人公である船医は、探検隊と契約して乗船しているものの、この探検にあまり気乗りしない。果たして「大建造物」が彼らの前に姿を現わすが、しかし……という長編冒険小説 アレス…

シュリックとかポランニーとかノイラートとか

シュリック 今度、吉川浩満さんが編集担当で『シュリック教授殺害事件──ウィーン学団盛衰史』という本が出るらしい。 またどでかいのが出ます。ぜひご予約を。 #編集担当書 #晶文社デイヴィッド・エドモンズ『シュリック教授殺害事件──ウィーン学団盛衰史』…

上田早夕里『上海灯蛾』

1934年から1945年の上海租界を舞台にしたノワール小説 阿片密売の利益をめぐる上海の裏社会での駆け引きに、ファム・ファタルの暗躍と、日本陸軍特務機関で働く日露ハーフ青年の執念が絡まり合い、血で血を洗う復讐譚と自由を求める男の物語が繰り広げられて…

『現代思想2025年6月号 特集=テラフォーミング』

テラフォーミングそのものにそこまで強い関心があるわけではないものの、まあでも『現代思想』で特集組むなら読んどくか、くらいの感じで手に取った。 っていうか、テラフォーミング特集でどんな記事集まってくるかは、普通に気になるよね。 テラフォーミン…

千葉雅也『センスの哲学』

タイトルにある通り、センスとは何か、という本 ここでいうセンスとは、美的直観とか美的判断とかいってもいいものだと思う(本書では、直観的な(非推論的な)判断力のこと、と言っている)。 また、本書は、芸術作品と日常生活を連続的なものとして捉えて…

井上雅彦編『進化論 異形コレクション』

「進化論」をお題とした書き下ろしホラーアンソロジー。『異形コレクション』シリーズとしては36巻にあたる。刊行年は2006年だが、「魚舟・獣舟」や「貂の女伯爵、万年城を攻略す」の初出媒体で以前から気になっていた。 『異形コレクション』は、90年代後半…

『SFマガジン2022年8月号』

3年ほど前のSFマガジン。刊行当時、気になりつつもスルーしていた。 最近TLで、本誌収録の春暮康一「モータル・ゲーム」への言及を複数見かけたので、読んでみることにした。 SFマガジン 2022年 8月号早川書房Amazon 「魔法の水」小川哲 これ小川哲『地図と…

エクス・リブリス月間

5月末から7月頭にかけてエクス・リブリス月間という感じで、6冊ほど読んだので、まとめておく。 経緯 2023年に「海外文学読むぞ」と銘打ち、集中的に読んでいた。 海外文学と言えば、で思いつく出版社やレーベルは複数あると思うが、自分の場合、白水社Uブッ…

オルガ・トカルチュク『逃亡派』(小椋彩・訳)

旅、移動、解剖学をめぐり116の断章で構成された小説 白水社エクス・リブリス 筆者はポーランド人作家で、2018年にノーベル文学賞を受賞している。その際の受賞理由は「博学的な情熱によって、生き方としての越境を象徴する物語の想像力に対して」とある。博…

2025年読書中間まとめ(?)

2025年も半年が過ぎた。 普段、半年単位で振り返りとかはしていないんだけど、ちょっとしたくなったので。 半年前、2024年振り返りの際に以下のようなことを書いた。 2023年の振り返り記事では、自分にしては珍しく、というか初めての試みとして「来年に向け…

オーナ・ハサウェイ、スコット・シャピーロ『逆転の大戦争史』(野中香方子・訳)

1928年のパリ不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)を画期として、国際的な法秩序が転換したとして、戦争にかんする国際法の歴史を描いた本 本書では、戦争を合法であるとするグロティウス的な法思想を「旧世界秩序」、戦争は違法であるとする法思想を「新世界…

呉明益『眠りの航路』(倉本知明・訳)

睡眠障害に悩まされる「ぼく」の物語と、大戦末期に日本へ渡り神奈川で戦闘機製造の少年工となった父・三郎の物語とが交互に進んでいく 白水社エクス・リブリス ざっくりいって、戦争と記憶をテーマにした作品だといえる。 三郎パートの多くが日本を舞台とし…

ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』(松本健二・訳)

20世紀科学史・数学史における人物伝の形で、科学が人類の理解を越えてしまったのではないか、ということを描きだそうとうする中短編小説集 白水社エクス・リブリス 登場するのは、フリッツ・ハーバー(「プルシアン・ブルー」)、カール・シュヴァルツシル…

岡崎乾二郎『抽象の力』(一部)

抽象絵画についての批評。抽象を、単に視覚的な実験として捉えるのではなく、物質的・運動的な観点で捉える。また、日本での抽象美術の動きがヨーロッパの動向の後追いではなく、同時並行的なものだったことを論じている。 色々なものが次々とリンクしていく…

岡田進之介「悲劇を観てなぜ悲しむべきなのか ─フィクション鑑賞における適切な情動的反応について」

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bigaku/75/1/75_49/_pdf/-char/ja 『美学』264 号(2024年7月) 去年のものだが、最近読んだ(刊行を知ったタイミングだとまだオンラインで公開されていなかった気がする。待っているうちに忘れていて、最近オンライン…

『ソウルの春』

1979年12月12日に韓国で起きた粛軍クーデターを題材とした映画 以前、『KCIA 南山の部長たち』 - logical cypher scape2を見て、次は『ソウルの春』を見るぞ、と思っていたのだが、気付いたら半年たっていた。プライム入りしたので、これはよい機会と思って…

ショクーフェ・アーザル『スモモの木の啓示』(堤幸・訳)

イラクの次はイラン、ということで、イラン革命によって翻弄された家族を描いた作品を読んだ。 白水社エクス・リブリス 本作は長編だが、ハサン・ブラーシム『死体展覧会』(藤井光・訳) - logical cypher scape2と同様、奇想というか非現実的な描かれ方を…