2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

うえお久光『紫色のクオリア』

まさに見事なセカイ系ラノベであったなあ、と思う。 人の能力が視覚化されるってブギポっぽいし。 ループのあり方は、ひぐらしっぽい。 語り口は、ちょっとだけサマー/タイム/トラベラーっぽいけど、あそこまで感傷的じゃないし、単に一人称の語りで、あとか…

デーヴ・グロスマン『戦争における「人殺し」の心理学』

なかなかなんとも言えない本であるが、良書だと思う。 戦争において兵士が一体何を体験しているのかという話で、主に第二次大戦とベトナム戦争だが、第一次大戦や南北戦争の資料も結構出てくる。 人は人をそうそう殺すことはできない、というのがまず確認さ…

『哲学の探究』第35号

伊佐敷隆弘「反実仮想とフィクション――実在する物個体をめぐって――」 反実仮想とフィクションの違いについて 細部の確定性(不確定なのがフィクション) 変更明示の原則(伴わないのがフィクション) 履歴への追加の不可能性 これらから、フィクションには実…

日下三蔵・大森望編『超弦領域』

法月綸太郎「ノックス・マシン」 タイムトラベルのパラドックスもの キテレツ大百科で航時機を作ったのは誰か、みたいな。 数理文学解析の話とか面白い 林巧「エイミーの敗北」 樺山三英「ONE PIECES」 現代版フランケンシュタイン。 ジャンジャックに比べれ…

夏コミ!『筑波批評2009夏』

新刊『筑波批評2009夏』が出ます。 コミックマーケット76三日目(8/16(日)) 東地区M−28a 特集「ゲームの思考」 僕たちはゲームの中に生きている。 その中で確かに脈打つ隠れた思考を炙り出す、ゲームをめぐる新しい言葉が今ここに! 本文1…

今月の文芸誌

群像8月号 戦後文学2009高橋源一郎×奥泉光 群像で戦後文学を読む企画をやるんだけどどう、みたいな感じの対談。 自分たちが戦後文学をどう読んできたかとか、今の文脈でも面白いものは面白いんじゃないかという話から、次第に企画会議へと変わっていく…

グレゴリイ・ベンフォード『大いなる天上の河』

@migiさんから『BLAME!』の元ネタだよと貸してもらった。 主人公がキリーン! でもって、ヒロインがシボ! ニアルティとかサナカンとかも出てきて*1、テンション上がる 舞台は、どっかの惑星なのでBLAME!とは違うけれど、電基漁師の生活と雰囲気は似ている気…

外部のなさとしてのセカイ系

『社会は存在しない』を読んでいて考えたことなどを書いていく。 『コードギアスR2』と『ダークナイト』 笠井は、「セカイ系と例外状態」の中で『コードギアス』を画期的な作品だとしたうえで、R2のラストについても論じている。例外状態において親殺し…

『社会は存在しない』限界小説研究会編

サブタイトルに「セカイ系文化論」とある通り、セカイ系評論集となっている。 「何を今更セカイ系なんて」と思う向きにも、ちょっと立ち止まってもらいたい。 これは、セカイ系と称されてきた作品について論じる、というわけではなく、セカイ系という概念が…

稲葉振一郎『社会学入門』

あとがきによると、稲葉振一郎の勤める社会学部1年生向けの授業を元にしたとのことで、元々一般教養科目としての性質があったようで、「社会学」入門であると同時に一般教養である。 一般教養であるって、よくわからない言い方になってしまったw 全部で1…

『講座美学3』今道友信編

とりあえず、美学って何なんだということで入門編として読んでみた。 美学の方法というタイトルで、色々な方法論が紹介されている。 わけわからんものもあれば、面白いものもあった。 現象学 フッサールの遺稿から、フッサールの美学を再構成するという試み…

飯田隆『言語哲学大全 意味と様相』

2巻と3巻、意味と様相の上下を読んだ。 やはりこれもまた、何で今まで読んでいなかったという感じだが、久しぶりに言語哲学に触れるとやっぱり楽しい。1年か2年に一回、言語哲学の本を読むといいのかもしれない。わからんけど。 入門レベルというのには…

奥泉光『グランド・ミステリー』

面白い! というか、今まで何で奥泉を読んでなかったんだ、俺と言いたくなる。 『鳥類学者のファンタジア』も面白かったけれど、こちらも圧倒的。小説の仕掛けとしては、こちらの方が上かも。 笑いに関しては、そもそも主人公のキャラが違うので比較できない…